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[登場人物] ■子分１号 ■子分２号 |
終身雇用制度が崩壊した現在、将来の設計図を描いておくことは重要である。
静 ：「オレさ、宗教をはじめようと思うんだよね。」
子２：「えっ？」
静 ：「ほら、将来の人生設計としてさ。５５歳ぐらいになったら再就職とか大変でしょ？ だから宗教家として生活費を稼ごうと思うんだよ。」
子２：「静 炉巌さんなら心配しなくても何かして食べていけるよ。絶対に大丈夫！」
静 ：「でも、オレはお金を儲けられるタイプじゃないからね。やっぱしお布施暮らしだろ」
子２：「静 炉巌さんは、心はないけど口はうまいもんね。」
静 ：「だいたい宗教なんて思い込みなんだからさ。なんかこう幸せそうな名前の宗教をつくれば、ついつい入っちゃう人がいると思うわけよ。馴染みやすそうな名前にしてさ。」
子２：「どんなの？」
静 ：「うーん、”満腹ニコニコ教”ってのは？」
子２：「ぶっ！ ヘンだよ。」
静 ：「耳に慣れればおかしくないよ。教祖の名前を宗教家っぽくすればいいだろ？」
子２：「”風”とか”雪”とかがつく名前？」
静 ：「そうそう！ ”雪見 大福”とかどうかな？」
子２：「そんなの”食いしん坊”しか来ないよ！」
静 ：「確かに信徒は、給料をお布施より食費に使いそうだな。説法会をやるとデブばかりで床が抜けるかもしれん」
子２：「説法って何やるの？」
静 ：「人々が悩んでいることに答えたり、怒りを代弁して信者の心を掴むんだよ。例えば”タコヤキ味”のお菓子って知ってる？」
子２：「あぁ、よくあるね。」
静 ：「オレは納得できないね！ あれってたこ焼きじゃなくて、単なる”ソース味”じゃん！ それを”タコヤキ味”って名乗るところにすごくウソを感じるわけ。どうなの？ タコの味がしたことある？」
子２：「…ないけど」
静 ：「だろ？ 今、こうやっている瞬間にも『ソースの味しかしないよ』って泣いてる子供が何人いると思う？ 『騙された！ やっぱり世の中は金だ』ってなっちゃうよ」
子２：「大げさだよ。」
静 ：「きっかけなんて些細なところにあるんだよ。だからこそ宗教で救うわけさ。”満腹ニコニコ教”は、そんな子供達のために日本一のタコヤキを作るとか。ソースは”お多福”、タコは明石から取り寄せ、青海苔は…えー…うーんと…食卓から！ どうよ？」
子２：「それって教祖じゃないよ。タコヤキ屋じゃん！」
静 ：「そうだな…じゃあ、お経を唱えながら焼く。焼きあがったら仏壇の前にある鐘みたいのをチーンって叩いて合図をする。そのうちチーンって音が聞こえると子供達が集まってくるようになるわけ。パブロフの犬みたいだろ？」
子２：「そしたら、どっかでお葬式があると子供達が集まっちゃうじゃん。」
静 ：「それは気持ち悪いね。そういう食い意地のはった子供は霊柩車に放り込んで処分だな。」
子２：「怖くなるからやめて！」
静 ：「でも、ここでやめたらオレはタコヤキ屋のままだから…」
子２：「いいよ！ そんなことより、パソコンにメッセージが出てるけどこれ何？」
静 ：「どんなメッセージ？」
子２：「英語だからわかんなーい。」
静 ：「わかんないじゃないの！ まずは辞書をひいて調べなさい！ 聞くのはそれから！ …それが仏の道です。」
子２：「ふん！」
静 ：「”ふん”じゃないでしょ！英語から逃げない。ドゥユ アンダ スタン？」
子２：「イエス！」
静 ：「アイシーっていってくれよ。」
子２：「…」
静 ：「グーテンダーク？」
子２：「…うん」
静 ：「”うん”じゃないでしょ。イッヒビーン？」
子２：「それって…ドイツ語？」
静 ：「よくわかったね。パーター イズ パーロット！」
子２：「…」
静 ：「ちゃんと答えてよ。こんなの日常会話だよ。」
子２：「なんて言ったの？」
静 ：「”お父さんはパイロットです”」
子２：「適当に知ってることを言ってるだけじゃん！！」
静 ：「オレはただ神の言葉をお伝えしてるだけですから。」
子２：「だったら私が神をやるから、さっさと教えて！」
静 ：「わかったよ。その代わりにこの資料をコピーしてきて。頼むよ、神様！」
子２：「…」
静 ：「神様、急いで！」
上司たるもの、たとえ神様が部下であっても使いこなすぐらいの度量が必要だ。
そして、神様の扱いを学んだら、将来はやはり教祖になるしかないかと思うのであった。
by 雪見 大福(03/04/08)
