『葛楽堂』と描かれた木製看板の奥に、古玩具だのワケのわからん品だのが所狭しと並んだショーケースが置かれている。そのショーケースを覗き込んで、いろんなモノたちを眺めながら、店主の桃源さんとときどき雑談を交わしている。
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葛楽堂のショウケースにシトロエンの移動販売車のミニカーが飾ってある。
「桃源さん。このカレー販売車は楽しそうだね」
「1981年に発売されたトミカダンディのシトロエン・ベンディングバンな」
「移動販売車はいいよね。ところでトミカダンディってなんなの？」
「トミカダンディはトミカを卒業した子供たちが次に遊ぶことを想定して、972年からはじまったブランドだ。当初はスケールもまちまちだったが1977年からは1/43スケールに統一されるようになった。ディテールやギミックも凝っていたが1994年に終了してしまうがな」
「ふーん。このカレー販売車は開くとどうなるの？」
「サイドを開くと看板になって、テーブルを引き出すことができる。別パーツでベンチも付属している。もちろん、リアも開くぞ」
「テーブルの皿とか寸胴とかって見入っちゃうね。彩色してるともっといいのに。移動販売車はほかにもあるの？」
「ラーメン販売車、ハンバーガーショップ、カレー販売車、フラワーショップの4種類が発売されている。それらのもとになったのは1978年に発売されたシトロエンＨトラックだ」
「あらためてみるとシトロエン Hバンって、無骨で恰好いいね」
「Hバンは1947年から1981年まで作られていた貨物自動車だが、元となったのはT.U.Bの軍用車だからな」
「目的に徹したデザインはシンプルで惹かれるね」
「うむ。おまえも目的ある人生をおくるための励みとして、このミニカーを買うといいぞ」
「自分はまだ人生を放浪中ですから」
私は肩をすくめると葛楽堂を後にした。
