『葛楽堂』と描かれた木製看板の奥に、古玩具だのワケのわからん品だのが所狭しと並んだショーケースが置かれている。そのショーケースを覗き込んで、いろんなモノたちを眺めながら、店主の桃源さんとときどき雑談を交わしている。
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葛楽堂のショウケースを眺めていたら、ミニカーの脇に小さなガソリンスタンドが置かれていた。
「桃源さん。このガソリンスタンドは雰囲気があっていいね」
「あぁ、それな。1955年から1965年にかけて、Dinky Toys社が発売していた”Esso Gasoline Stand”だ」
「昔のガソリンスタンドの給油機って、こんな丸い標識みたいなのがついてたの？」
「もちろん、モデルになった給油機にはちゃんとついているぞ。これが当時の写真だな」
「あっ、同じじゃん！ こういうのがついてると、なんだか給油機がロボットみたいに見えてくるね」
「ちょっと擬人化っぽい感じがあるよな。Dinky Toysは、この丸い部分がないスタンドも発売していたが、やっぱりさっきの形の方が味があるよな」
「そうだよね。でも、こういう小物って、ミニカーと並べるとすごく雰囲気がでるよね。世界観が広がるっていうかさ」
「ジオラマというほどではないが、程よく味が出るよな。プラスチックじゃないところが、またビンテージ玩具の良さだよな」
葛楽堂の店主は、ニヤリと笑うと珈琲を求めて、カフェカウンターへと移動した。
[2023/09/19]
