『葛楽堂』と描かれた木製看板の奥に、古玩具だのワケのわからん品だのが所狭しと並んだショーケースが置かれている。そのショーケースを覗き込んで、いろんなモノたちを眺めながら、店主の桃源さんとときどき雑談を交わしている。
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葛楽堂のショウケースに空港の特殊車両のミニチュアカーが飾ってある。
「桃源さん。これってバンダイの”エアポートシリーズ”でしょ？」
「うむ。1970年代に発売された”エアポートシリーズ No.6コンベア車”だ」
「やっぱり空港の特殊車両はいいね」
「うむ。ひとつの機能に特化しているからデザインにもムダがない。現在においてもコンベア車の形状は殆ど変わっていないことがそれを証明しているだろう。これが現在のコンベア車だ」
「ほんとだ。雨除けみたいなのがついたぐらいであまり変わらないね」
「コンベア車はベルト・ローダー車とも呼ばれるが、荷物や郵便物などを航空機の貨物室に送ることに特化した車両だからな」
「実はさ。子供の頃、ベルトコンベアに憧れてたんだよね。工事現場とかにベルトコンベアがあるでしょ。あれに寝そべって運ばれてみたいと思ってた」
「頭のおかしな子だったんだな」
「違うよ！ 夢がある子供って言ってよ。ところで、このコンベア車のベルトって動くの？」
「いや、コンベア部分の昇降はできるが、ベルトは塗装で表現されている」
「動けばいいのにね」
「うむ。だったら、こいつを買って改造しみたらどうだ？ きっと楽しいぞ」
「いやいや、コンベアには乗りたいけど、作りたいわけじゃありませんから」
私は肩をすくめると葛楽堂をあとにした。
