『葛楽堂』と描かれた木製看板の奥に、古玩具だのワケのわからん品だのが所狭しと並んだショーケースが置かれている。そのショーケースを覗き込んで、いろんなモノたちを眺めながら、店主の桃源さんとときどき雑談を交わしている。
＊
葛楽堂のショウケースの隅に薄汚れたパッケージが飾られている。
「桃源さん。これまた古そうなパッケージだね。ホンモノ？」
「あたりまえだろ。1964年に発売されたHasbroのオリジナル”Combat Sand Bag Set“。つまり土嚢だな」
「オリジナルのGI JOEって、こういうアクセサリーが多いよね」
「なにしろ、男の子をターゲットとした初めての人形だからな。精密なミリタリーのミニチュアアクセアリーを揃えて遊びの幅を広げるのも戦略のひとつだった」
「なるほどね」
「ちなみにこの土嚢のパッケージの裏面には製造国がこんな風に記載されている。”PRINTED IN JAPAN,CONTENNTS MADE IN JAPAN AND BRITISH CROWN COLONY OF HONG KONG”とな」
「イギリスの直轄植民地かぁ。GI JOEって戦争モノの玩具だけど、それ自体が初期は戦争を引きずってるよね」
「日本兵がモロに悪役顔だったりな。それも時代ということだ」
葛楽堂の店主は、そういうと手にしていた珈琲を飲み干した。
