今朝、私は部下である子分２号に、「今日は打ち合わせ以外に作業部屋から出ないから、各部門へのフォローはあなたがするように！」と厳しい口調で伝えた。
上司とは傲慢な一面をもっているものなのだ。私が珍しく醸し出すピリピリとした空気に、いつもは生意気な子分２号もおとなしく従っている。
なにしろ、本日の私は自分が床に落としたゴミでさえ、子分２号に拾わせる程なのである。
作業部屋から出ない…とはいえトイレには立つ。
私は他人を寄せ付けない険しい顔をして廊下を歩く。すれ違った女子社員に「静 炉巌さん、なんかコワイですよ」と言われても、無言でうなづくだけだ。
どんな人間にだって、傲慢にならざる得ないときがある。他人を寄せ付けつけることなく、心の空虚さを一人で抱えねばならないときがあるのだ。
きっかけはささいなことだった。私は今朝、溜まっている仕事を気合いを入れて片づけるために、早めに出社して作業部屋の整理に手をつけた。
そして、まずは床の片隅を占領していたパソコンの周辺機器を持ち上げようとかがんだときだ。ビリッと音がしてズボンの股が裂けた。
慌てて鏡で見てみると、股間が少し破けている。
私は心の動揺を鎮めるために、自動販売機に珈琲を買いにいった。珈琲のボタンを押し、お釣りをとろうとかがむと、ピリッと音がして、さらに股間のスースー間が拡がった。
ヤバイ…！！ 傷口がひろがってしまった。
私はズボンの破れを隠すため、ロッカーに行って上着を着た。急いで作業部屋に戻ろうとすると、いきなり廊下でつんのめってしまった。
んっ？ 下を見ると靴紐がほどけている。私は反射的に靴紐を結び直すためにしゃがんだ。
ビリッ…まただ！！（ダブルミーニング！）
私はトイレの個室に避難してズボンをチェックしてみた。なんと２０センチも破れている。上着を着ていたって、少しでもかがめばパンツ丸見え状態である。
”パンツ丸見え”…会社でそんな小学生みたいな嘲笑を浴びるのはイヤだ。それを避けるためには、人を寄せ付けない傲慢な人間になるしかない。
そんなわけで傲慢になった私であったが…。結局、早退しました。
静 炉巌（99/12/09）
