『葛楽堂』と描かれた木製看板の奥に、古玩具だのワケのわからん品だのが所狭しと並んだショーケースが置かれている。そのショーケースを覗き込んで、いろんなモノたちを眺めながら、店主の桃源さんとときどき雑談を交わしている。
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葛楽堂のショウウィンドウの片隅に、GIジョーのアクセサリーが飾ってある。
「桃源さん、これってオリジナルなの？」
「なんだ、その質問は？」
「だって2003年だかに、GI Joeの40周年記念でオリジナルパッケージを再現したシリーズがでたでしょ。あれから本物のビンテージかどうか区別するのが難しくなったよね」
「よくも悪くも罪深いシリーズだからな。だがこれは1964年に発売されたオリジナルの”EXCLUSIVE NAVY ATTACK SET”だぞ。米海軍用の装備セットな」
「これがオリジナルなんだ。なんだか、60年近く前のものとは思えない保存状態だね」
「この状態のものは希少だ。ちなみに40周年版はこれな。外箱から取り出せば殆ど同じだろ？」
「ホントだね。確かにこれじゃ、ちょっと見は新作かビンテージかわからないね」
「うむ。で、この救命具をGIジョーの海軍兵が装備するとこんな感じになる」
「随分とモコモコしてない？ さすがにこれはやりすぎだと思うけど」
「満更そうでもないぞ。これがモデルとなった当時の救命具…life preserverの写真だ」
「あっ、同じだ！」
「なっ？ 当時のGIジョーのアクセサリーには救命浮輪なんてのもあったぞ」
「浮輪に書かれたU.S.Nって？」
「United States Navy…つまりアメリカ海軍のことだ。ちなみにこのパッケージのクレジットは面白いぞ」
「えぇっと、なになに…”MADE AND PRINTED IN THE BRITISH CROWN COLONY OF HONG KONG”。イギリスの直轄植民地ってことか？！」
「時代だよな。海軍のシリーズには、他にもゴムボートやスキューバセットなんてものもあったぞ。当時のアメリカの子供たちは、実際にGIジョーを水に投げ入れたりして乱暴に遊んだんだろうな」
「へぇ。高価な舶来品として扱われていた日本でのGIジョーとは扱いが違うってことだね」
「男の子が遊ぶためのフィギュアだからな。乱暴に遊ばれるのが本来の姿なのだ。どうだ、おまえも童心に帰ってコイツで乱暴で遊んでみたら？」
「そんな勿体ないことできるわけないじゃん！」
葛楽堂の店主はニヤリと笑うと、カウンターの珈琲に手を伸ばした。
