寒くなってきました。鍋物が恋しい季節ですね…。 私は16歳になる老猫（メス）です。人間で言えば齢80歳ぐらいでしょうか？ 諸事情により名前を明かすのはご勘弁ください。 私は静寂を好んでいます。老いた私の毎日は、キャットフードと煮干しといった質素な食事と近所の散歩、そして陽射しを浴びながら窓際でのんびりと眠る…そんなことの繰り返し…。 でも、それはとても平和で幸せな毎日でした。そう、アイツが来るまでは…。 |
私の家に図々しく上がりこんできたちっこいヤツ！
静 炉巌さんは、こいつに「チロちゃーん！」と何度も嬉しそうに呼びかけているので、きっとそれがこいつの名前なのでしょう。
でも、この子は自分の名前がよくわかってないようです。それにしても、どこから連れてきたんだろ？ 早く戻してこい！
静 炉巌さんはテーブルの下に隠れていた私の姿を見つけると、そいつ…チロとやらを私のそばに連れてきました。
「ほら、チロちゃんだよ。これから一緒に住むことになったから、ミ○ちゃん、よろしくねー」
イヤです！！ だって、この家は私だけの楽園なのですから。
静 炉巌さんがチロから手を離すと、ヤツは興味深々といった様子で私に寄ってきました。馴れ馴れしい！ こういうことは最初が肝心です。
私が「ウシャシャシャーー！！」と思い切り威嚇してやると、チロはビビって逃げていきました。そ
れにしても子猫ってばウザイ！ 私は自分が子猫に生まれなくて本当によかったと思いました。
さぁてと、気分なおしにトイレにでもいってこよっと。私の専用トイレは人間のトイレの脇に置いてあります。洗面所を抜けてと…。
あっ！ チロが私のトイレでオシッコしてる！！！
私のトイレでチロがしゃがんでいます。あんたのトイレは向こうにあったでしょ！！ だいたい男のくせに女子トイレを使うなんて！
私はお婆さんに訴えました。私を家に招きいれてくれたご婦人は今ではお婆さんですが、いつも私の味方なのです。
「にゃーにゃー！！！（チロが私のトイレを使ったー！）」
お婆さんは慰めるように私をやさしく撫でてくれました。
腹が立つとお腹が減ります。私は怒りを静めるために食事をとることにしました。いつものキャットフードと煮干し、これが私の大好きな食事です。
さぁてと、リビングを抜けてと…。
あっ！ チロが私のゴハンを食べてる！！
アンタの子猫用キャットフードはあっちのお皿にあるでしょ！！
私のゴハンを食べないで！ あっ、煮干しまで齧ってあるー！！
私は再びお婆さんに訴えました。お婆さんは私のことをよくわかってくれているのです。
「にゃーにゃー！！！（チロが私のゴハンを食べたー！）」
お婆さんは、やさしく私を抱いて慰めてくれました。
「よしよし、そんなに鳴いて、お外に遊びに行きたいのね」
私は勝手口から出されてしまいました…
