『葛楽堂』と描かれた木製看板の奥に、古玩具だのワケのわからん品だのが所狭しと並んだショーケースが置かれている。そのショーケースを覗き込んで、いろんなモノたちを眺めながら、店主の桃源さんとときどき雑談を交わしている。
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葛楽堂のショウケースに、助手席に犬を乗せたブリキのスポーツカーが飾ってある。
「桃源さん。このブリキ自動車はDRIVING PETシリーズだよね」
「うむ、イチコーと関東トイズのDRIVING PETシリーズ No.3だ」
「このシリーズ好きなんだよね。人間と犬が仲良さそうで温かい気持ちになるから」
「犬はいいよな」
「この車にはモデルはあるの？」
「かなりデフォルメされているが、1956年型リンカーンじゃないか？ これだ」
「そう言われれば雰囲気があるような…」
「デフォルメなんてそんなもんだろ。フロントグリルなんて特徴が似ているじゃないか」
「似てるような似ていないような…」
「だったらこいつを買ってじっくりと眺めてみたらどうだ？」
「いやいや。せっかく買っても比べるための実車を持っていませんから」
私は首を横に振ると『葛楽堂』を後にした。
