『葛楽堂』と描かれた木製看板の奥に、古玩具だのワケのわからん品だのが所狭しと並んだショーケースが置かれている。そのショーケースを覗き込んで、いろんなモノたちを眺めながら、店主の桃源さんとときどき雑談を交わしている。
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葛楽堂のショウケースにコンテナ牽引車のミニカーが飾ってある。
「桃源さん。こういうコンテナ牽引車って空港でよく見るよね」
「おまえ、それは空港で飛行機をよく見るよねと言うのと同じだぞ」
「あっ、そうか。これってトミカ?」
「いや、バンダイが1974年から75年頃に発売していた”エアポートシリーズ No.7 コンテナー牽引車”だ」
「これって空港でやたらとコンテナをつないで走ってるよね。昔、息子に山本 忠敬さんの『ひこうじょうのじどうしゃ 』( 1994/1/25)って本を買ったんだけどさ。空港のクルマって面白いから自分が楽しんじゃったよ」
「山本 忠敬さんは”はたらくじどうしゃ”シリーズの方だな。躍動感のあるイラストが素晴らしい」
「そうそう! で、コンテナー牽引車って、昔からなんとなく好きだったんだよね。たくさんのコンテナを引っ張るところは、クルマなのに貨物列車みたいだしさ」
「確かに貨物列車みたいだな」
「コンテナー牽引車って、トミカからもでてなかったっけ?」
「これだろ? 牽引車とコンテナな」
「これこれ! 新しいバージョンも発売されてたけど、やっぱりこのイメージなんだよね。バンダイのと違う車種に見えるけど、こういう牽引車って実車は何種類ぐらいあるんだろうね」
「そこまではわからん。興味をもったら調べてみろ。面白い発見があるかもしれないぞ。そういうきっかけがミニカーから生まれるなんていいじゃないか」
「桃源さん、メンドくさくなったから切り上げようとしてるでしょ?」
葛楽堂の店主はニヤリと笑うと、黙ってカウンターの珈琲に手を伸ばした。