『葛楽堂』と描かれた木製看板の奥に、古玩具だのワケのわからん品だのが所狭しと並んだショーケースが置かれている。そのショーケースを覗き込んで、いろんなモノたちを眺めながら、店主の桃源さんとときどき雑談を交わしている。
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葛楽堂のショウケースの隅に可愛らしいブリキの銃が並んでいる。
「桃源さん。この銃はかわいいね」
「1950年代に米澤玩具が海外向けに制作した”SPACE GUN“な」
「こっちにプリントを変えたバリエーションもあるぞ。外箱は同じだがな」
「ホントだ。どれも1950年代って感じだね」
「1950年代はSF映画の時代でもあるからな。『禁断の惑星』、『 宇宙戦争』など、この流れは1960年代にも続く」
「宇宙銃ってまだ夢が残っている分野だよね。2020年代の現在でも実現できてないわけだしさ」
「レーザー銃という意味では中国が開発しているけどな」
「ダメダメ、それコワイよ。宇宙銃じゃないし。それに光線が可視化されてて、できたらグルグルと螺旋で発射されたら最高！」
「まるっきりSF映画だな。気持ちはわかるがな」
「この玩具は引き金を弾くとどうなるの？」
「発火石が仕込んであって、赤いプラスチックの窓が光るようになっている」
「発火石って昔は安い戦車のオモチャにも使われてたよね」
「当時はスタンダードな仕掛けだったな。どうだ、発火石を偲んでこのスペースガンを買っていくか？」
「いやいや、発火石は偲ばなくてもいいですから」
私は肩をすくめると『葛楽堂』を後にした。
