『葛楽堂』と描かれた木製看板の奥に、古玩具だのワケのわからん品だのが所狭しと並んだショーケースが置かれている。そのショーケースを覗き込んで、いろんなモノたちを眺めながら、店主の桃源さんとときどき雑談を交わしている。
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葛楽堂のショーケースの隅に、中日ドラゴンズのマスコット”ドアラ”が飾ってある。
「桃源さん！ これ絶対に狙ってるよね。オレに指摘させようと思ってワザと並べてるでしょ！」
「あぁ、ドアラのペーパーフィギュアな」
「葛楽堂って古玩具の店なんでしょ！ これはもう古玩具どころか、玩具でもないじゃん！ 」
「まぁまぁ、おまえのそういう反応がみたかったんだよ」
「フザケすぎだよ！ もともと少ないお客さんが余計に来なくなるからね。これはどこから持ってきたの？」
「2008年11月21日に中日新聞社から発行された『ドアラの九州旅日記』という本のオマケだ。”幻のカード”、”噂のDVD”、”奇跡のペーパーフィギュア”が3大付録ということになっていたな」
「ドアラって中日ドラゴンズでしょ。なんで九州旅日記なんてだしたの？」
「これはJR東海が九州新幹線の開通の際に中日とのコラボでキャンペーンしたときのものだ。最初はwebと中日新聞にドアラの九州の旅を連載して、その評判がよかったから書籍化となったわけだ。別府、由布院、太宰府、博多、阿蘇、熊本、門司港、長崎の地を巡る旅行記だな」
「なんで桃源さんがそんなに詳しいの？」
「知り合いが関わっていたからな」
「だから本をもらったんだね。野球に興味のない桃源さんがおかしいと思ったよ」
「わはは。たまたま納戸で見つけたからな」
「だからってからかわないでよ！：
私は肩をすくめると葛楽堂をあとにした。
