『葛楽堂』と描かれた木製看板の奥に、古玩具だのワケのわからん品だのが所狭しと並んだショーケースが置かれている。そのショーケースを覗き込んで、いろんなモノたちを眺めながら、店主の桃源さんとときどき雑談を交わしている。
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葛楽堂のショーケースにヘンなペーパーフィギュアが飾ってある。
「桃源さん！ これ絶対にオレにウケようと思って並べたでしょ！？」
「なんのことだ？ なんの変哲もないペーパーフィギュア”メカマツオ1号”だが」
「いやいや、おかしいって！これって 骨董でもないし、玩具でもなんでもないじゃん。だいたい”メカマツオ1号”ってなんなの？」
「おまえ、増田こうすけ先生の”ギャグマンガ日和”を知らんのか！？」
「なにそれ？」
「呆れたヤツだな。オレは全巻揃えて枕元に置いているぞ！ 気まぐれで手にとって、どこを読み返しても笑ってしまう。まさに天才の所業だ。メカマツオというのは、『ギャグマンガ日和 2巻』の”メカマツオ”の回に登場する松尾芭蕉が扮するダンボールロボットなのだ！」
「えっ？ 松尾芭蕉？」
「松尾芭蕉と弟子のソラくんの俳句旅だ。えぇい！ 説明は面倒だから買って読むのだ！ ブリキ玩具なんぞにかまけてる場合じゃないぞ！」
「そ…そんなに近づかないで！ 怖いよ！ で、それにこのヘンなロボットがついてるわけね」
「バカモノ！」
「ひっ！」
「メカマツオのペーパークラフトは、『こぞりこぞって大集合日和キャラ大全集』のオマケなのだ」
「知らないよ、そんなの！」
「しょうがないやつだな。人生には知っておくべきことと知らなくていいことがあるのだ。”ギャグマンガ日和”は知っておけ。ほら、さっさと古本屋に行ってこい！」
「なんでそんなに推薦するくせに古本屋なのさ！」
私は肩をすくめると葛楽堂をあとにした。
