『葛楽堂』と描かれた木製看板の奥に、古玩具だのワケのわからん品だのが所狭しと並んだショーケースが置かれている。そのショーケースを覗き込んで、いろんなモノたちを眺めながら、店主の桃源さんとときどき雑談を交わしている。
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葛楽堂のショウケースにアイスクリームバンのミニチュアカーが並んでいる。
「桃源さん。このアイスクリームバンは、この前見せてもらったSPOT-ONのアイスクリームバンに似てるね」
「Budgie の” Tonibell Ice-cream Van”だな。同じTonibellアイスクリームのバンだから似ていて当たり前だ」
「Budgieって聞いたことないけど」
「Budgie社は英国の玩具メーカーだ。もともとは1940年代におもちゃの販売を開始したMorestone社の車玩具を製造をしていたModern Products社が前身で、1959年にBudgie社と改名したのだ」
「これって、よくみるとSPOT-ONのアイスクリームバンとも少し違うような気がする。キッチンの窓はこっちの方が丸みを帯びてるし」
「そうだな。元になった実車が微妙に違うからな。Budgieがモチーフとしたのはこのタイプだろう。その下がSPOT-ONがモチーフとしたバンだ」
「ホントだ! ベースとしてる車は同じだけど、キッチン部分のウィンドウとかリア部分の形状が微妙に違うんだね」
「ミニカーから当時の実車を知っていくなんて面白いだろ」
「うん。ふだんは気に留めたりしないことにフォーカスしていくのが楽しいね」
「この楽しみをより味わうためにこの車を買っていくか?」
「いえいえ。この車についての知識はここまでで十分ですから」
私は肩をすくめると葛楽堂を後にした。