『葛楽堂』と描かれた木製看板の奥に、古玩具だのワケのわからん品だのが所狭しと並んだショーケースが置かれている。そのショーケースを覗き込んで、いろんなモノたちを眺めながら、店主の桃源さんとときどき雑談を交わしている。
＊
葛楽堂のカウンターの向こうの椅子で、店主が暇そうに本を読んでいる。
「桃源さん。映画『カーズ』のキャラクター玩具について教えてほしいんだけど」
「オレはそっち系は扱ってないぞ！」
「まぁまぁ、売りモノじゃなくたってさ。前にMateelの『カーズ』ミニカーを孫に買ってあげてたって言ってたでしょ？ ケチケチしないで教えてよ」
「お前、失礼だな。で、なにを知りたいんだ？」
「この前、『トイストーリー』のウッディとバズが『カーズ』のキャラクターみたいになっているミニカーを見かけたんだけど、それが気になってるんだよね」
「これのことか？」
「そうそう！」
「ディズニーがキャラクターのミニカーをたくさん出してるけど、どれも”車のデザインにキャラクターを取り入れました”って感じでしょ。でも、このミニカーは『カーズ』にキャラクターを取り入れた感じだから気になってたわけ」
「そのまんまだろ」
「えっ？」
「これは映画『カーズ』に登場したトイストーリーのキャラクターだぞ』
『こんなキャラ、映画に出てたっけ？』
『本編の後に出てくるぞ。”ラジエータースプリングス・ドライブインシアター”で上映されている劇中映画の『Toy Car Story』に登場するキャラクターだな』
「言われてみれば観たような観ていないような…」
「しっかりと登場しているぞ」
「別パッケージで”ハム”も発売されていた。これは見た目も愛らしいが、お腹にはお金の取り出し口が造形されているし、かわいい尻尾も描かれている。特にタイヤが足のように斜めに取り付けられているのは感動ものだな」
「ホントだ。タイヤが斜めについてる！」
「いい仕事をしてるよな。”ラジエータースプリングス・ドライブインシアター”は3本の映画が上映されている。次は『Monster trucks Inc.』だ」
「『モンスターズインク』のサリーとマイク！」
「『Monster trucks Inc.』は、TOY CAR STORYのクリエーターたちが作ったという想定だ」
「凝ってるねぇ」
「ピクサーらしいよな」
「劇中映画に登場する”イエティ”も製品化されているぞ」
「雪の表現がイエティっぽいね。これがないとふつーのブルドーザーになっちゃうし」
「最後の映画は、『A bug’s life 』はbugはワーゲンの愛称でもあるから、当然に主人公はワーゲンだな』
「『バグズ・ライフ』のフリックと団長だ。これって『トイストーリー』に続くピクサーの2本目の映画だけど知らない人が多いよね」
「プロット自体は『七人の侍』のオマージュらしいが、いまひとつ地味だからな。でも、ワーゲンのフリックは触覚もキュートでかわいいな。劇中映画に登場するピクサーキャラのミニカーはこれだけだ。ほかにもカーズ化されたピクサーキャラはあるけどな」
「なにそれ？」
「ピザプラネットのデリバリーカーに決まってるだろ。ピクサー映画のお約束だ」
「そうだった！ 『カーズ』の世界ではトッド（TODD）っていう名前なんだね」
「やっぱりピザプラネットは重要キャラだよな」
「自分の作品に必ず登場するヒッチコックみたいな隠れキャラだね」
「だがそれがいいのだ！」
