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[登場人物] ■子分１号 ■子分２号 |
今月は他部署の仕事も手伝っているためにやたらと忙しい。資料作り終えるといつの間にか昼休みになっていた。
静 ：「なんか仕事しなくて済む方法ないかなー？ 最近、忙しすぎるんだもん」
子１：「みんなそう思ってるよ！」
静 ：「そこなんだよ！！！ そこがポイント！ みんながそう思ってることじゃん！」
子１：「はっ？ なにが？」
静 ：「だからさ、多くの人が”幸せになれますように”とか”世界が平和になりますように！”って願ってるわけでしょ？」
子１：「まぁ…」
静 ：「よくテレビなんかで”世界平和を祈願して”みたいな儀式とかやってるけどさ。オレは、あぁいうのって現実的じゃないと思うわけ。実際には国ごとの思惑があるんだから世界平和なんて無理なんだよ。町内で揉めてるところだつてザラにあるんだから。だからね、もっと身の丈にあったところからはじめればいいと思うんだよね」
子１：「どうやって？」
静 ：「”皆が幸せになるように”なんて大それたことは考えないでさ、誰かひとりのこと、例えばオレだけが楽ができるように皆が願えばいいんじゃないの？ それぐらいだったら、みんなが力をあわせればなんとかなるんじゃないかな」
子１：「えっ？」
静 ：「世界が…いや日本だけでもいいや。例えば日本国民の一人一人がオレに１円をくれたら一億一千万円になるわけじゃん。それは決して難しいことじゃないし、不可能なことじゃないんだよ。皆がその気になるだけで実現できるんだから！ どう？」
子２：「なんか聞いててムカムカしてくる…」
静 ：「なんでよ？」
子１：「なんでそれが静炉巌さんなわけ？」
静 ：「そりゃ言い出しっぺだもん。それにヤワなやつなら日本国民の期待というプレッシャーに負けちゃうけどオレだったら大丈夫！ ひけ目なんてこれっぽっちも感じないよ。それどころか一億一千万人から寄付をもらったとしても、薬代を落として困っている人に、たった１００円ぽっちを出し惜しみすることだって堂々とできるよ」
子２：「すごくイヤな人！」
静 ：「とりあえずさ、第一歩としてこの部屋からはじめてみませんか？」
子２：「１円がほしいわけ？」
静 ：「違うよ！ それじゃ２円にしかならないだろ！！ もっとこうオレの幸せ指数を上げるようなことだよ」
子２：「もう十分に面倒みてるよ！」
子１：「そうだよ！ さっきもEXECLの本を買ってきてるから勉強するのかと思ったら、ちゃっぴちゃん（子分２号のこと）に渡してたじゃん」
静 ：「部下のために参考書を買ってくるなんて偉い上司じゃん」
子１：「『しっかり勉強してオレに簡単に教えて』とか言ってたでしょ！ 知ってるよ」
静 ：「まぁまぁ、だってさ、最近の会議は技術屋さんが参加してるからVBAとか.NETとか専門用語を知ったかぶる必要があるんだよね。でも憶えてる時間ないし、とりあえずポイントとなる言葉を散りばめて喋ってれば誤魔化せるからね」
子２：「静炉巌さんは口が達者だからね。ヤバイと思ったら『ところで』とかって話題を変えるし」
静 ：「そうかな。あっ…！！」
そのとき、テーブルの上に置いてあった紙コップに手が当たった。紙コップは勢いよく倒れ、コーヒーが私の股間に流れ落ちた。
子２：「どうしたの？ あぁーあ」
静 ：「コーヒーがズボンに…。オシッコもらしたみたいになっちゃった」
子１：「ほら、ウェットティッシュ。これで拭きな！」
静 ：「ネクタイにも…」
子１：「このタオルを洗面所で塗らしてパンパンしてきな。すり込んじゃだめだよ！」
子２：「早く行っといで！！」
静 ：「でも机が…。」
子１：「拭いとくから行っといで！！」
静 ：「…すみません。あとで１円ずつあげるから。」
子１＆子２：「いらないよ！」
他の社員に見られないように股間を不自然に上着で隠してヨチヨチと移動する。
私は子分たちに「素直に１円を受け取って、この姿のことは忘れてください」と願いたい気持ちになった。
by 静 炉巌(03/03/28)
