カラー麺タイマー ウルトラマン

葛楽堂タイトル1

『葛楽堂』と描かれた木製看板の奥に、古玩具だのワケのわからん品だのが所狭しと並んだショーケースが置かれている。そのショーケースを覗き込んで、いろんなモノたちを眺めながら、店主の桃源さんとときどき雑談を交わしている。

葛楽堂の主人の大きな机の上に、赤いボックスが置かれている。

「桃源さん、その箱はなんなの?」

「売り物じゃないぞ、孫にあげるんだからな。これは2011年12月に壽屋から発売された”カラー麺タイマー ウルトラマン”というキッチンタイマーだ。定価は2100円だったな」

「ふーん。ウルトラマンって、変身していられる時間が3分だよね。あっ、だから麺タイマーか! カップラーメンってだいたい3分だもんね」

「まぁな。だがこいつはキッチンタイマーとしてよりも、子供のウルトラマンごっこに使えるぞ。なにしろ本物のカラータイマーから採寸した実物大のサイズだからな」

「サイズもだけど、なんか見た目がホンモノっぽいね」

「なかんかいいだろ。形だけじゃなく、い点灯から赤い点滅に変化するライトギミックと音声も忠実に再現されている。音声は怪獣の声入りに切り替えることもできる」

「怪獣の声?」

「バルタン星人、ゴモラ、レッドキングなんかがサンプリングされている。ウルトラマンのデュワって声も入ってるぞ」

「そういえば、この前、『ウルトラマンが泣いている』っていう円谷プロの内幕を書いた本を読んだんだよね。あらためて円谷英二の凄さと当時からの経営赤字ってのを知ったけれど、その後のお家騒動みたいなのってひどいね」

「いろいろな見方はあるだろうが、現実として今ではパチンコ屋に買収されたからな。パチンコ屋の宣伝に使われるようなヒーローは、もはやヒーローとはいえないな」

「ウルトラマン好きな子供が、パチンコに通うようになったらイヤだものね。ところで、このタイマーは裏にクリップがつけられるから、服に着けて遊べるんだ。こういうのが子供の頃にあったら楽しかっただろうな」

「大人になってからでも、子供との怪獣ごっこで遊べるぞ。もっとも怪獣役しかやらせてもらえないけどな。まぁ、オレとしてはパチンコ屋の軍門にくだったウルトラマンを、とことんやっつけたい気分になるけどな」

葛楽堂の店主はニヤリと笑うと、テーブルの珈琲を飲み干した。

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