『葛楽堂』と描かれた木製看板の奥に、古玩具だのワケのわからん品だのが所狭しと並んだショーケースが置かれている。そのショーケースを覗き込んで、いろんなモノたちを眺めながら、店主の桃源さんとときどき雑談を交わしている。
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葛楽堂のショウケースの隅にブリキの蝶が飾ってある
「桃源さん。これは？」
「ブリキ製の蝶のブローチ…”New Fashion Broach”だ。メーカーはわからんが日本製だ」
「綺麗だけど、なんだか安っぽいね。駄菓子屋に置いてある玩具みたい」
「いわゆる駄玩具というヤツだな。でも、それがいいのだ。子供がセーターなんかにこういうブローチをつけてたら可愛いじゃないか。プリントも鮮やかだ。見てみろ、これがワンシートだ」
「わぁ、なんだか標本みたいだね」
「うむ。ブリキ素材とプリントの組み合わせは、プラスチックでは出せない独特の存在感があるよな」
「そうだね。レトロという言葉では片づけられない感じ」
「わかってるじゃないか。だったら、こいつを買って部屋に飾ってみるなんてどうだ？」
「いえいえ、こういうのは駄菓子屋に飾ってあってこそ光るものですから」
私は肩をすくめると葛楽堂をあとにした。
