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[登場人物] ■子分１号 ■子分２号 |
このところ世間は年金問題で騒がしい。やはりここは、どんな状況になっても自分の食いぶちは自分で稼ぐぐらいの備えは必要ではないだろうか？ 私は子分どもと昼休みにブレーンストーミングを開始した。
静 ：「ねぇ、オレは最近、老後の生活のことを考えてるんだけどさ。」
子１：「えぇっ！？ 静炉巌さんの口から”老後”なんて単語を聞くなんて思いもしなかった！」
静 ：「今、年金とか騒がれてるからねぇ。んで、素朴に疑問なんだけどさ。自分の家の敷地内に公衆電話型の貯金箱を置いておくってどうなのかな？ ほら昔、ドリフとかであったじゃん。これで地道に小遣い稼ぎってできると思う？」
子１：「それって詐欺だって言われるよ」
静 ：「だから、マジックでわざと子供がイタズラしたみたいな字で”ちょきんばこ”って書いとくんだよ。オレは子供みたいな字を書くのは得意だからね」
子１：「ヘタくそな字しか書けないじゃん！ 自分の書いた字が読めなくて、よく”ちゃっぴ”（子分２号のこと）ちゃんに解読してもらったりしてるでしょ！」
静 ：「ちゃっぴちゃんは、なんで読めるんだろ？ 本人になったつもりで解読してるのかね？ 本人でも読めないのに」
子２：「なってないよ！！ そんな貯金箱を置いて『金返せ！』って言われたらどうするわけ？」
静 ：「そりゃ、居留守に決まってんじゃん。ついでに敷地内にどっかから持ってきた木彫りの仏像と賽銭箱を並べといたら、電話型貯金箱に騙された人が、仏様に救いを求めてお賽銭を入れてくるんじゃないかな。いわゆる二重取りですよ」
子１：「いい歳なんだから、もっと地道に働きなよ。」
静 ：「地道ねぇ…。５００円のガチャガチャで１００円の景品しか出さないとか？」
子１：「…ねぇ、空しくならないわけ？ もっと積極的に働きなよ！」
静 ：「うーん、お墓のお供え物を集めてきて売っちゃうみたいな？」
子２：「そんなの誰が買うの？」
静 ：「お墓参りの人？」
子２：「もっとすごいことを考えてよ！」
静 ：「あっ！ この前、すごいこと考えたんだよ。タダで手紙を出す方法！」
子２：「…なにそれ？」
静 ：「これはすごいよ！ まず差出人の欄に宛名を書くんだよ。そんで、宛先のとこにはデタラメな住所を書いて切手を出さずに投函するわけ。そしたら宛先不明の郵便物は差出人に差し戻されるから、タダで手紙が届くことになるんだよね。」
子２：「…えーと、…あっ、そうかも！」
静 ：「でしょ！？ これで稼げないかな？」
子２：「どうやって？ そんなの商売にならないよ。」
静 ：「うーん、文通にしか使えないか…。」
子２：「そんな文通相手はイヤだよ！ 毎回、あて先不明で届くんでしょ？ ２回目から郵便屋に怒られるじゃん」
静 ：「やっぱ手堅いのは食べ物屋さんかねぇ。１００円ラーメンの店とかどうかな？」
子２：「それって儲けあるの？」
静 ：「実は、割りバシ代が５００円なんだよ。箸袋に小さな字で値段が書いてあるわけ。レジでヤクザみたいな店員が請求するんだよ。」
子２：「もっとちゃんとしたやつ！」
静 ：「そうだなぁ…浅草に『天丼のうまい店』っていう名前の店があるの知ってる？ 最近、オヤジがますます偏屈になってきてるらしいけど、ここはいつも大人気なんだよね。おいしいし、なんたって店名がインパクトあるでしょ？」
子２：「…」
静 ：「こんな風に印象に残る店名をつけたら繁盛するんじゃないかな。例えば『昔からすっごく有名なカレーの店』っていう名前の店！ どう、インパクトあるだろ？」
子２：「なんでいきなり有名なわけ？」
静 ：「そこが企業秘密なんだよ。実はこの店のカレーは、こっそりボンカレーを使ってるわけ。ボンカレーって昔から有名じゃん。だから店名はウソじゃないのよ。これで”有名”という言葉に惹かれた似非トレンディ野郎が大行列！ 後ろの方には、”はしのえみ”とかも取材で並んでるんじゃない？」
子２：「来ないよ！ だいたいボンカレーっておいしいの？」
静 ：「オレも食べたことないけど、おいしくなかったら商品相談室とかに電話して『なんか、まずいんですけど』って言えばおいしくしてくれるんじゃないの？ その意味ではちょっと他力本願なとこもあるけど。」
子２：「まるっきり他力本願じゃん！！」
静 ：「なんでそう未来の芽を潰すわけ？ 起業家への道を歩みだそうとしてるのにさ。」
子２：「諦めな！」
静 ：「もう一個！！ 昔、中村雅俊が青春ドラマで『なんでもやる会社』っていうのをやってたんだけど、その逆はどうかな？ 『なんにもしない会社』！ 電話には出ない、訪問には居留守、ＦＡＸでの依頼もお断り。」
子２：「それ会社じゃないから…。収入ないじゃん。」
静 ：「あるよ！ 全国の企業から、飼い殺しにしておきたい人材を預かるんだよ。”リストラしたいけど社長の浮気現場の写真を持ってるからクビにできない社員”とかの出向先の会社」
子２：「それ、すっごくイヤな感じの会社！」
静 ：「うん、めちゃくちゃイヤだよ。みんなやる気ないもん。トイレの紙だって無くなったらそのままだから。」
子２：「静炉巌さん、推薦状を書いてあげるから行っといで！」
子１：「私も書いてあげるから、２枚もってきな！」
どうであろうか。自分の上司をリストラしようとする悪魔のような子分たち…。
もしそんな会社に飛ばされるようなことがあれば、私は彼女たちをも引き連れていくことを固く心に誓うのであった
静 炉巌（2003/4/1）
