『葛楽堂』と描かれた木製看板の奥に、古玩具だのワケのわからん品だのが所狭しと並んだショーケースが置かれている。そのショーケースを覗き込んで、いろんなモノたちを眺めながら、店主の桃源さんとときどき雑談を交わしている。
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葛楽堂のショーケースに大きなキャンピング・トレイラーのモデルが飾ってある。
「桃源さん。こ…これ欲しかったモデルだ！」
「Franklin Mintが1995年に発売した”1968型 Airstream Trailer International Land Yacht”な。先日、引き取ったものだ」
「葛楽堂でってビンテージ玩具の店でしょ。1995年って新しくない？」
「固いこと言うな。オレはこんな風に社内が作り込まれたモデルが好きだからな」
「そうなんだよ。これってさ、当時、恵比寿にあったMr.Craftで見たことがあるんだけど、定価が5万ぐらいだったから眺めることしかできなかったんだよね」
「このモデルは一時期は10万前後で取引されていたが、2003年に再発版が出て落ち着いたな」
「再発版なんてあったんだ」
「再発版は2003年のクリスマスに1500台限定で発売されたな。日本では定価39,800円だったかな。パーツのモールドやギミックなどは全く同一で、ファブリック系の色調とシリアルナンバーが付いた限定生産品というのが違いだ」
「このモデルはトレイラーの内側が当時としてはよくできてたよね」
「うむ。見飽きなかったな」
「Airstream Trailerって、本物は内側のデザインは変えられるんでしょ？」
「それがキャンピングトレーラーの楽しさだからな。Airstream社のカタログにも基本パターンが紹介されている」
「こんな大きなキャンピングトレーラーなんて、日本で走らせられないけど楽しそうだよね。こういうのって憧れるな」
「夢の代替手段も玩具の役割のひとつだからな。特撮番組を観た子供が手元に怪獣ソフビを置くのと同じことだろ」
葛楽堂の店主はそう言って、カウンターの珈琲に手を伸ばした。
