私とボロ屋探検隊を結成している純隊員（既婚）が体験した、恐怖の実話である。
昨年の夏のこと、純隊員は地元の川崎市で保母の仕事を終え、家路に向かって自転車をこいでいた。時刻は夜９時頃である。
彼女の家は、市内の中心街から少しはずれたところにある。彼女は鼻歌を歌いながら、機嫌よく走っていた。だが、あと１０分程度で自宅に着くというところで、何かの怪しい気配を感じたという。
彼女は、自転車を止めて、周囲を確認してみた。何もないようだ。再び、自転車をこぎだした彼女が、ふと空を見上げると・・・雲の切れ間に光の点が移動している！
「ＵＦＯだ！」
彼女は、はじめてのＵＦＯ（未確認飛行物体）目撃体験に興奮していた。光はすばやく移動している。だが、自転車をこぎながら彼女は気がついた。その光は、彼女を追いかけるように上空を移動しているのだ。
彼女の頭には、”Ｘ－ファイル”やＵＦＯ本によって、”キャトル・ミューテーション”とか”ロズウェル事件”などの不可解な事件が大量にインプットされていた。
「このケースは、メキシコでＵＦＯにさらわれた事件と同じだ！」
彼女には思い当たることがあった。その事件でＵＦＯにさらわれた女性は、彼女と同様に妊娠していたのである。
「宇宙人にさらわれたら人体実験をされてしまう」
宇宙人は、さらってきた人間の頭にヘンな発信器を埋めこんだりするのだ。彼女は必死になって自転車をこいだ。
ＵＦＯは、どこまでもついてくる。恐怖は頂点に達していた。彼女は、家につくと自転車を玄関に放り出したまま、あわてて家の中へと駆け込んだ。
部屋に入った彼女は、灯りもつけずに窓のそばに近寄ると、カーテンをそっと開けて空を確認してみた。ＵＦＯは彼女を監視するかのように上空にいる。
もうすぐ旦那が帰ってくる時間だ。彼女は、布団に頭まで潜りこんで息を潜めていた。
「早く帰ってきて！」
やがて、旦那が帰ってきた。
「何やってんだよ。灯りもつけないで。具合でも悪いのか？」
「ねー、窓から空を見てみて・・・円盤が追いかけてきてるの！！！」
「・・・」
「光がいるでしょ？」
「光って・・・駅前にできたパチンコ屋のサーチライトのこと？」
「へっ？」
彼女の命は無事だった。
静 炉巌（98/8/1）
