黄昏の職場日記:セクハラ疑惑だよの巻

syokuba1

[登場人物]

子分1号
中途入社だった私と入社年度がさほど変わらないからと、タメ口どころかときどき上から目線になる女性部下。

子分2号
妙な感性と仕事ぶりは評価できるが、かなりお調子者。子分1号の後輩となる女性部下。

週末に懐かしの「ウルトラマン」のDVDを視た。隊長を”キャップ”と呼んでいるのがなんかカッコイイ。やっぱりリーダーの呼び方はキャップだよな。

…それはさておき、新婚旅行で2週間近くの休みをとっていた子分2号が、本日から出社である。

子2:「ねぇ、静炉巌さん。この資料なんだけど…」

静:「ちょっと待った! さんざん新婚旅行で遊んできたんだから、これからはオレを名前で呼ぶのは禁止です」

子2:「じゃ、なんて呼ぶのよ!?」

静:「キャップと呼ぶこと!」

子2:「ふぅ(ため息)…また、何の番組を見たのよ?」

静:「いや、べつに何も見てないけど。でも職場にふさわしいリーダーの呼び方っていえば、やっぱり”キャップ”でしょ。で、どうしたの?」

子2:「エクセルがうまく動かないんだけどみてくださいよ」

静:「…」

子2:「…キャップ!

静:「しょうがないなぁ。じゃ、これが終わったらみてあげるから」

子2:「あぁーあ、私はこういうとき奥田さんになりたいと思うよ」

静:「なんだよそれ?」

子2:「だって、総務の奥田さんが困ってたら、絶対にすぐやってあげると思うもん。お気に入りじゃん」

静:「あっ、何よ。オレがいつそんなこと言ったよ。だいたいロクに話したことだってないでしょが」

子2:「静 炉巌さんは、すぐ態度にでるからわかるもん。奥田さんが郵便物を配りにきたらニコニコしてるじゃん。なんか笑顔が違うんだよね」

静:「そんなことないって!! オレは誰にでも平等に接してるよ。ヒトによって態度を変えたりしますか?」

子2:「限定的に変わる!」(偉そうに!)

子1:「そうそう!」(子分1号、便乗!)

静:「なんでいきなりそっちの方から会話に加わるんだよ。だいたい限定的ってなんだよ?」

子2:「小柄で髪の長い娘にはやさしい! あと目がパッチリしてて…」

静:「もう! オレの心に土足で入り込むなよ! なんで勝手に決めるのさ」

子2:「でも、当たってるでしょ?」

静:「…そんなことないんじゃないかな。みんな平等だよ」

子2:「じゃ、奥田さんが『困ってます』って内線してきたら後回しにする?」

静:「すぐ行く!!」

子2:「ひいきだー! セクハラだよー

静:「あっ、なんだよ! 意味わかってんのか? オレがセクハラしたことが一度でもある?」

子2:「ないよ。だけど静炉巌さんって、なんかセクハラのイメージなんだよなぁ

子1:「そうそう!」(また便乗!)

静:「なんでだよ! ”裸にエプロン”とかに憧れてるから?」

子2:「そういうこと言うのはセクハラだー!

静:「違います! ”裸にエプロン”はセクハラではなく、男のロマンです。きみたちのダンナや彼氏だってそうなんだよ。これは男のDNAに刻み込まれてるからさ。オレは今度結婚したら絶対お願いするもんね」

子2:「じゃ、ダンナにやらせようかな。」

静:「ダメだよ。これは女が入り込めない男の聖域なんだよ。女の子は、男子トイレに入っちゃだめでしょ。おんなじことよ」

子2:「でも、静 炉巌さん、女子更衣室入りたいでしょ?」

静:「キャップと呼びなさい! 堂々と入るのはイヤだよ!

子2:「こっそり入りたいんじゃん。やらしー!

静:「だからオレの心に土足で入り込むなって! …オレは、今からちょっと資料室のパソコンの調査に行くから、子分2号は、こっちのPCの画面が連動するかみてて」

子2:「はーい」

私は資料室へと移動した。そこには臨時の資料整理チームがいて、その隣には話題になった奥田さんが来ていた。

私はパソコンを調査すると、子分2号に内線をかけた。

静:「もしもし、子分2号か?」

子2:「そうです。」(なぜか周囲で笑い声が聴こえる)

静:「さっきの数字はどうなってる?」

子2:「見れません!」

静:「なんで見れないのよ?」

子2:「だって今、子機をもって、キャップの後ろにいるから…」

静:「(振り向きながら)あっ!! なんでこんなとこに…」(周囲爆笑!)

子2:「(小声で)だって、奥田さんが資料室にいくのが見えたからさ。静 炉巌さん、どんな顔してるかなぁと思って見にきたの。なんかすっごく微笑んでたよ。あの笑顔は、私たちには絶対みせないねー」

静:「それセクハラだろー!! オレの心の部屋に土足で入り込んで、勝手に冷蔵庫開けたり、ベッドの下のぞいたりすんなってばー!

子2:「はいはい、キャップ!」(生意気度200%)

新婚旅行から帰ってきた子分2号は、既に噂好きの主婦と化し、問答無用の迫力で私を圧倒するのであった。

静 炉巌(99/4/5)

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