1970年代に一世を風靡した伝説的な刑事ドラマ『太陽にほえろ』では、登場する刑事達にニックネームがついていた。
例えば、ジーパンを履いてるから”ジーパン”とか、なんとなく雰囲気があるから”デンカ”とかさ。子持ちの女刑事というだけで”マミー”ってのもいたね。
とにかくニックネームの特徴は、恥ずかしいほどに直球というところにあって、ロッキー山脈が好きだから”ロッキー”とか、ゴリ押しするから”ゴリさん”とか、小学生でも「そりゃちょっとないんじゃないの？」って思う感じだったね。
んで、その後は当然のごとく、刑事ドラマのパロディがあると、必ず妙なあだ名をつけられる刑事が続出していたのだけれど、今回はそういうのを考えてみた。
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まずは、ピンで人気がとれるキャラとして、女刑事”エプロン”ってのを主役にもってきたいね。もちろん、”エプロン刑事”は、裸にエプロン１枚つけてるだけさ。男性の夢をかなえる浪漫なキャラだね。
そうすると、当然他のメンバーも、うまく雰囲気をあわせなきゃいけないわけで、こんな感じでどうかな。
◆ニックネームと特徴
ハミチン：ボス。トランクスの裾からハミでている。
エプロン： 裸にエプロンをまとっただけの凄腕女刑事。
半ケツ ：トランクスがめくれて、半分ケツが見えている。
ワキガ ：ワキガで足くさ、風呂嫌いの秘書。
エバラ： タレこみ屋
それでは、第一話のはじまり…。
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第一話 「颯爽 エプロン刑事登場！」
日曜の昼のこと。銀座のビルの屋上から、飛び落り自殺しようとする若者がいた。ビルの下では群衆が見上げている。
若者を説得するために屋上にあがるエプロン。その姿を見上げていた群衆の一人が鼻血を吹き出す。それをきっかけに見上げていた男は全員鼻血だ。だが誰一人としてその場を去るものはいない。
皆、鼻血を吹き出しながらも必死にビルの上のエプロンを見ている。やがて出血多量でバタバタと死んでいく見物人達。もはや路上は血の海だ。
そんな危険地帯でオペラグラス（双眼鏡）を売り歩く一人の男がいた。
半分だけケツが出ていることがトレードマークの半ケツである。彼はエプロンが現場に向かうときには、必ずこの手の小遣い稼ぎを企てるのだ。
半ケツは、オペラグラスの他にも、潰れかけた町工場からポラロイドカメラを大量に安く仕入れて倉庫に保管している。これは風の強い日にエプロンが出動すると売れまくる目玉商品となるのである。
その頃、ボスのハミチンは、刑事部屋で指揮をとっていた。彼は”ハミチン”の名に恥じぬようスラックスをはかない主義だ。上着の下は、よれたトランクスと靴下だけである。
上着は丁寧にパンツの内側に折り込まれていた。なぜなら上着を外側に出すと、”ハミチン”部分が見えにくくなってしまうため、わざわざハミチンを見えやすくするための彼成りの工夫だった。ハミチンの細やかな心遣いは、部下のハートをガッチリと掴んでいる。
ハミチンの電話が鳴った。それは「銀座の飛び降り自殺は狂言だ」という情報屋エバラからのタレコミだった。
それは狂言自殺で群衆の注目を集めているうちに宝石店を襲うとい計画だったのである。ハミチンは半ケツに宝石店へ行くよう指示すると、自分も現場へと向かった。
だが宝石店に到着したハミチンと半ケツは、人質の交換と引き替えに犯人に捕らえられることになる。そして犯人は半ケツに”３時間で死に至る毒”を注射してしまったのだ！
エプロンは、半ケツが打たれた毒の解毒剤をもって現場に駆けつける。そのときの彼女はエプロンの代わりに”裸に割烹着”で変装していた。
犯人を説得しながら、店内に入る割烹着のエプロン。早く半ケツに解毒剤を飲ませなくては！ あせるエプロンは床に散らばったガラス玉に足をとられて転んでしまう。割烹着の裾がめくれた！
それを見た半ケツとハミチンのパンツが、はじけとんだ。もはや、半ケツは半ケツではなかった。全ケツである。そしてハミチンも、モロチンとなってしまった。下半身丸出しの二人の男。
全ケツの半ケツと、モロチンのハミチン。そして割烹着のエプロン。ここには重大な問題が含まれていた。
人の視覚判断は、主にパターン認識である。これは強烈な特徴をもった人を見ると、その特徴だけが脳にインプットされて、他の情報を見落としてしまう傾向をもっている。
半ケツとハミチンは、普段から”半ケツ”，”ハミチン”という強烈なトレードマークをもっていた。従って、エプロンも彼らのことを、顔ではなく、その特徴だけで認識していたのである。エプロンが二人の顔を覚えていなくても不思議なことではない。
つまりエプロンにとっては、今や特徴を無くしてしまった二人を区別することは不可能になってしまったのだ。一体、”全ケツ”と”モロチン”を区別することができるだろうか？
解毒剤は一人分しかない。いったいどちらに飲ませればいいのだ！？
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…というところで音楽が高らかに鳴り響いて、ここがドラマのクライマックス！ 結局、二人の判別は、普段から強烈なワキガの“ワキガ”と仕事をしているため、ハミチンの鼻がバカになっていたことを利用して無事に解決するわけ。
こうして第一話は終了するんだけど、書いているうちにだんだん途方に暮れてきちゃった。またオチなしパターンかなぁ。…しょうがないよね。思いつきだけで書くといつもこうなんだもん。でも、私はここで強調しておきたい！
もし、このドラマが放映されることがあれば、どんなにつまらないお話であったとしても、どんなにチープなセットであったとしても、エプロン刑事が出演する限り、私は毎週チャンネルをあわせることだろう。もしかしたらビデオに撮るかもしれない。
だってそれが男というものなのだから！！！
by 静 炉巌(1999/4/25)
