2000年8月に書いたもの。友人の同僚に伊藤さんという真面目な女性がいて、その真面目さが行き過ぎていて、よく笑い話のようになっていたことから、”もしもシリーズ”的に、もしも伊藤さんが〇〇だったらの第一弾で書いたもの。当時はディズニーをネタにすることはマイナーな領域だったけど、今はディズニーも散々ネタにされているのでボツ倉庫に。 |
伊藤さんは、食品会社に勤める真面目な人です。いつも手を抜かず地道に働く伊藤さんは、まさに模範的な社員だと言われていました。
ただ唯一、彼に欠点があるとすれば、それはマジメすぎることでした。
ある日のこと、伊藤さんは上司の部屋に呼び出されました。伊藤さんが緊張しながら部屋に入ると、上司はおもむろに新しいプロジェクトの責任者を伊藤さんにまかせることを告げました。
新しいプロジェクト…それはディズニーランド内の食べ物に新しいメニューを加えることでした。伊藤さんは大役を受けて静かに燃えました。
さっそく伊藤さんのリサーチがはじまりました。真面目な伊藤さんはどんなときでも手を抜くことをしません。まずはディズニーランドをまわって、園内の食べ物をチェックするのです。
そこにはさまざまな食べ物が売っていました。ミッキーの顔をかたどったパンケーキ,同じくミッキーの形のアイスクリーム,ワッフル…よくみると特長的な食べ物はどれもミッキーの形をしています。
「そうか! 基本はミッキーのシルエットなんだ! これはディズニーのシンボルなんだろうなぁ。ということは、新しいメニューにもミッキーのシルエットをとりいれた方が受け入れられやすいだろう。」
伊藤さんは、新しいメニューを必死に考えました。これまでの調査を元に一生懸命に工夫するのです。ミッキーの形に加工できて、子供が大好きで、大人の味覚にも耐えられる本格的な食べ物…しかも、遊び心があってお手軽なもの…
やがて、社内で試食会を行う日がやってきました。伊藤さんは考えに考えた試食品をテーブルに並べます。
気難しい顔をした上司達や同僚達が、伊藤さんの試作品を味見します。
「どうでしょうか?」
「なるほど、確かにそれなりに受けるかも知れないな。ちょっと説明を頼むよ。」
「はい。この作品の名前は見てのとおりですが、”ミッキー・ハンバーグ”です。子供の大好きななハンバーグをミッキーの形に加工しました。ただ、それだけではどこにでもあるハンバーグになってしまうので、大人の方にも納得していただけるよう本格的なものをと思い、ミッキーにちなんで肉はネズミ肉を使用しています。」
「げっー!!」
「それだけではありません。”カニ爪コロッケ”のように遊び心をとり入れようと思い、ハンバーグの下の部分にはネズミのシッポを埋め込んで、ミッキーのシッポに見立てました。」
「おえー!!」
伊藤さんは、ほどなく子会社に飛ばされました。
by 静 炉巌(00/8)