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[登場人物] ■子分１号 ■子分２号 |
昼休みのことだった。食事を終えて戻ってきた私がメールチェックをすると、一緒に仕事を進めている別会社の担当者から一通のメールが届いていた。
静：「あっ！！」
子２：「どうしたの？」
静：「ちゃっぴちゃん（子分２号のこと）さー。さっき、『メールソフトのテストさせて』とか言って、オレのパソコンいじってたでしょ。その時、”差出人”の名前変えたね？」
子２：「うん、ちゃんと反映されるか見たかったから。でも、ちゃんと元に戻したよ。」
静：「ちょっと、こっちに来てこのメールを見なさい！」
子２：「？？？」
メールをのぞきこむ子分２号。仕事の内容が書かれたメールの一番最後には、次の文が添えられていた。
『それから、お気づきかとは思いますが、いただいたメールの差出人の名前が aho になっていますが、よろしいのでしょうか？』
子２：「わはははーー！ ごめんごめん。」
静：「ごめんじゃないの！！ ”アホ”でメール出しちゃっただろー！ どうしてくれんだよー！」
子２：「まぁまぁ、しょうがないじゃん。」
静：「まったくもう！ だいたいねー、きみ達は上司に対して尊敬の気持ちが足らなすぎです！！」
子２：「あっ、ちょっと。」
静：「なに？」
子２：「立ったついでに、そこの引き出し閉めといて！」
静：「これ？」
子２：「うん。ありがとう、上司！」
静：「ありがとうじゃないでしょ。オレを使うなっちゅうの！！ オレは、これからは厳しくいくから！！ わかった？」
子２：「またぁ～？」
静：「文句を言わない！！ まずは指示の与え方から変更するから！ これわかる？」
私はタップのように、足でトントンと床を鳴らした。
子２：「なによ？」
静：「これは、あなたを呼ぶときの合図！ オレがこんな風に靴で床を鳴らしたら、呼ばれたと思いなさい。子分１号を呼ぶときはこういうリズムね。」
子１：「なんで私まで！」
静：「いいの！！ 上司は権力者だから！ じゃ、練習です。ちゃっぴちゃんから！」
トントトン
子２：「ちっ！」
静：「なにそれ？」
子２：「タップで呼ばれたから、舌打ちで返事してるの。」
静：「…」
トントトン
子２：「ちっ！」
静：「…」
子２：「あっ、その顔は本当に悔しいらしい…。」
静：「ふぅ（ため息）。いいですか、よく聞きなさい。」
子２：「…」
静：「あなたは今、森にいます。でも、枝ばかりみているので、そこが森だと気づいていません。」
子２：「なにそれ？」
静：「例え話です。」
子２：「なんの？」
静：「うーん、…道に迷ったってこと？」
子２：「知らないよ！ 思いつかなかったんでしょ」
静：「まぁ、いいから。とりあえず、昼休み終わったら、このソフトをちゃっぴちゃんのパソコンにインストールしといて。テストするから。」
子２：「やだよ。私のパソコンが壊れたらどうすんのよ！ いつもそれで立ち上がらなくなるんだから！」
静：「いいじゃん、いくじなし！」
子２：「自分のでやればいいじゃん！」
静：「やだよ。壊れたらどうすんのさ。」
子２：「自分こそ、いくじなし。」
静：「よし、じゃあ、いくじがあるとこをみせてやる！ あなたのパソコンで！」
子２：「やーめてよ！ あっ、ヨダレがでちゃった。今のは喜んだわけじゃないよ。」
トントトン
子２：「ちっ！」
静：「はい、返事したからＯＫね。」
子２：「えぇ、…じゃ、もし壊れたら再インストールしてよぅ。」
上司の勝利であった。いや、勝利と呼ぶべきではない。これは当然のことなのだ。不安気な顔で某ソフトをインストールする子分２号。日頃の罰だ。苦しむがよい！！ うはははー！！
立ち上がらなくなってしまった子分２号のパソコン。そして、彼女の冷たい視線。その日、私は黙々と再インストール作業を行ない、終電で帰った…。
by 静 炉巌(2000/10/15)
