『葛楽堂』と描かれた木製看板の奥に、古玩具だのワケのわからん品だのが所狭しと並んだショーケースが置かれている。そのショーケースを覗き込んで、いろんなモノたちを眺めながら、店主の桃源さんとときどき雑談を交わしている。
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葛楽堂のカウンターで、店主が暇そうにアクビをしている。
「桃源さん、あそこにあるのって、昭和のメカゴジラだよね？」
「あぁ、1973年にポピーが”超合金シリーズ”を大ヒットさせた。それに対抗して1975年にブルマァクがオリジナルの合金玩具シリーズとして発売した”Z合金ジンクロン”シリーズの”メカゴジラ”だ。定価は 1350円だったな」
「これって箱にはロケットパンチみたいな写真があるけど、メカゴジラにそんな設定ないよね？」
「ジンクロンシリーズはアバンギャルドだからな」
「アバンギャルド？」
「自由な発想で作られた前衛的な設定の玩具ってことだ」
「でもロケットパンチはともかく、メカゴジラってもともと全身武器じゃなかったっけ？」
「メカゴジラはな。凄まじいのは同時に発売されたゴジラの方だ。これを見てみろ」
「なにこれ？ ゴジラがサイボークになってるじゃん！ 格納庫、指令室、戦車つきって書いてあるし。これってゴジラの皮をかぶったメカゴジラ？」
「なっ？ アバンギャルドだろ？」
「アバンギャルド過ぎだよ！ ゴジラの設定と全然違うじゃん！」
「だよな。結局、ジンクロンではメカゴジラの方がゴジラの１０倍も売れたのだ」
「たしかにメカゴジラは金属玩具の素材にあってるもんね」
「当時はこれがメカゴジラの玩具としては一番だったからな」
「そうなんだ」
「うむ。1978年になってポピーが”超合金シリーズ”としてメカゴジラを発売したがな」
「なんかデフォルメの仕方が似てるね」
「一応、『メカゴジラの逆襲』バージョンになってるけどな」
「ジンクロンの『ゴジラ対メカゴジラ』バージョンを持っていても欲しくなるようにしたのかな。とこでなにが違うの？」
「腕に”２”と描いてあるだろ」
「そこ！？」
「ほかにもあるぞ。知りたかったら、こいつらを買ってじっくりと見比べてみたらどうだ？」
「２つも買うなんてムリですから」
私は首を横に振ると、葛楽堂を後にした。
