|
[登場人物] ■子分１号 ■子分２号 |
朝、出社するといきなり子分２号がくってかかってきた。
子２：「ちょっとー！ 夕べは静 炉巌さんのせいでひどい目にあったよ。」
静 ：「えっ？ オレ？」
子２：「スパイ容疑をかけられちゃってさ。ほら、昨日、静 炉巌さん、フィギュアスケートが趣味っていうオジサンの話をしておちょくってたじゃん。今度、クルクルまわりながら話し掛けてみようかなーとかってさ。それでね。きっとこの人はワザとらしい喋り方で話しかけるんだろうなぁって思ってたら昨日の夢に静 炉巌さんが出てきたんだよ」
静 ：「なにそれ？」
子２：どっかの街角で静 炉巌さんがワザとらしい喋り方して、誰かに話しかけてるの。目をそらしたりして、その様子は明らかに怪しいのよ。そしたら黒い服を着た人に『あいつは怪しい。スパイだ』って思われてさ。静 炉巌さんは捕まりそうになったのよ」
静 ：「…」
子２：「でも、そういうときの静 炉巌さんは素早いからさ。すぐに逃げちゃって、代わりに私が仲間だと思われて追いかけられたの。もう怖くてさ。私は屋根から屋根に”猿飛びエっちゃん”みたいに追いかけっこしてさ。こっちが洗濯物の陰に隠れると、向こう洗濯物の陰からのぞいてるのよ。でも結局、追いつめられて捕まっちゃってさ。ひーって思ったら目が覚めた…」
静：「勝手にヘンな夢みるなよ！」
子２：「静 炉巌さんこそ、勝手に夢に出てこないでよ！」
静：「それは失礼！ ところで、この前オレが出した宿題はできたの？」
子２：「なんだっけ？」
静：「会社のホームページ用にキャラクターを作ってって言ったでしょ。女子供のハートをガッチリと掴む凄腕のキャラクターを！！」
子２：「あっ！ あれかぁ、作ったけど…こういうの苦手なのよぅ。…見る？」
静：「絶対笑わないから見せてみ。…どれよ？」
子２：「これ…」
子２：「”まうんとくん”っていうの。」
静：「…」
子２：「なんか言ってよ。」
静：「山キャラなの？ うーん、山が好きなお年寄りに人気が出る…かも…な」
子２：「もうひとつあるの。…見る？」
静：「…うん」
子２：「これ…」
子２：「”なめら〜”っていうの。」
静：「…」
子２：「なんか言ってって！」
静：「…ナマコ？」
子２：「違うよ〜！ ナメクジ…」
静：「これ、動いたらちょっとイヤかも」
子２：「で、どう？」
静：「どうって言われても。う〜ん、いや…よく考えてくれたよ。…ありがと。会社のキャラクターとしては斬新だよね。常識を破ったっていうか、破りすぎ？みたいな…」
子２：「だから苦手だって言ったじゃん！ だったら静 炉巌さん、作ってよ！」
静：「オレ？ オレにこういうのを考えさせたらスゴイよ。じゃ、オレが今朝思いついたのを教えてあげる。ちょっと紙ちょーだい。」
子２：「ホントにできるの？」
静：「だまらっしゃい！ いいか、まずはふつうに動物を描くでしょ…ほらできた。」
子２：「これって…オバＱ？」
静：「なに言ってんの！ どう見たって、ペンギンだろ！！ なんの変哲もないペンギン！！！ でも、スゴイのはここからだから。いいか？ ペンギンとパンダの共通点ってわかる？」
子２：「えぇ〜、わかんない？」
静：「ペンギンとパンダは、どっちも模様がシロとクロのツートンなんだよ。でさ、どっちもかわいさ爆発キャラだろ。だから、こうやってふたつをあわせる。ほら、ねっ？ パンダ模様のペンギン…どうだ！ ネーミングは”パンギンくん”！！ かわいさ大爆発！！」
子２：「…」
静：「なんか言ってよ！」
子２：「…ヘン」
静：「…」
子２：「ねぇ、考えたんだけど会社のページってやっぱり固い感じの方がよくない？」
静：「確かに硬派なページの方が好感度あるかもなぁ。うん、キャラクターはやめましょう」
我々に必要なのは才能ではなかった。”才能のなさをカバーする言い訳を思いつく脳”…それこそが真に大切なものだったのである。
ちなみに、”パンダ＋ペンギン”を結構気に入ってた私は、”ペンギン模様のパンダ”…通称”ペンダくん”もこっそりと描いていた。
静 炉巌[99/4/29]
