いやぁー、よかったー！ 先月観たヴァン・ダイク・パークスのライブの感激も冷めやらぬまに、遂に待ちに待ったブライアン・ウィルソンのライブ！
僕がでかけたのはジャパンツアーの最終日(99.7.14)だ。場所は、東京国際フォーラムのホールＡ。
僕の席は、前から８列目のほぼ中央だったので、舞台がすぐそこに見える。周囲には萩原健太氏をはじめとする業界人がてんこ盛り状態である。
９０年に観にいったビーチボーイズ武道館ライブでは、結局ブライアンが来日しなくてがっかりしたけれど、でもブライアンは本当にライブができる状態にあるのだろうか？
海賊版のＣＤやビデオで最近のブライアンを見ると音程はよれよれだし、観ていて辛くなる場面が多かったもんなぁ。舞台に登場するまでは、ライブをキャンセルしてしまう不安も消えないしさ。登場しても最終日だからへたってるかもなぁ…。次から次へと不安材料ばかりが浮かんでしまう。だってブライアン・ウィルソンなんだもん。
そんな心配をよそに、やがて開演時間の７時を少し過ぎると、場内の照明が落ちて、舞台上に設置されたスクリーンに約２０分間のビデオ上映がはじまった。
これは、これまでのブライアンの歴史を駆け足で紹介したもので、素材は既存のビデオやＴＶ放映されたものから集めたものだけど、アウトテイクと思われる場面や音源(“Add Some Music To Your Day”のアカペラ)などもあって、そこそこに楽しめるし、会場の雰囲気をうまくつくっていく。
ビデオが終盤にさしかかるとスクリーンの後ろにメンバーが次々と登場してきた。そしてビデオが終わると遂にブライアンの登場である。拍手と歓声があがる。本当にブライアンだー！！ 音楽界の歴史を築いた天才がここにいる！
１曲目は”The Little Girl I onece Know”からはじまった。ブライアンは舞台の中央のキーボードに座っていて、その横にはボーカルとギターのジェフリー・フォスケットが立ち、この二人を囲うようにワンダーミンツとサポートメンバーが脇を固めている。全米ツアーに参加したジョー・トーマスは来日していないということだ。
のっけから素晴らしい演奏で圧倒されてしまうけど、このライブでのジェフリー・フォスケットの活躍は特筆ものである。美しい高音のボーカル、ギタリストとしての活躍はもちろんのこと、なによりもブライアンを完璧にサポートしている。
例えば、ブライアンの高音がかすれたり、うまくでないときには、すぐにユニゾンで声を重ねてフォローにはいり、聴衆に不自然さを抱かせない。まさにブライアンと一体となったボーカルなのだ。きっとジェフリーって本当にいい人なんだろうなぁ。
ステージ上のブライアンは、笑顔はあまり見せないもののかなり上機嫌だ。ほとんど１曲ごとにＭＣが入り、ところどころで「ア（リ）ガトウ」と叫ぶ。でも、キーボードには手を置いているだけみたいなんだよね。バックを固めるワンダーミンツの演奏とコーラスは完璧で、ほんの少しも乱れることがない。
３曲目の”Don’t Worry Baby”がはじまるとウルっときた。長い間、自分の中で一番好きな歌だったからさ。そして、その次にこれまた大好きな”Kiss Me Baby”が続く。今回のツアーでの演奏曲は、ブライアン自身がライブでやりたかった曲を選曲したというけれど、ビーチボーイズのライブと比べると、本当に意外な選曲が混じっている。
第一部の後半では、なんと”ペットサウンズ”からのインスト曲が２曲(Let’s Go Away For Awhile,Pet Sounds )披露された。ブライアンは演奏に参加せず、舞台側を向いて座っている。まるでブライアンがレコ－ディング・スタジオでミュージシャンに指示をだしている光景を観ているようだ。そして演奏は素晴らしいものだった。
SURFIN USAでは上機嫌のブライアンが踊る。サーフィンのポーズをしたり、観客の一人と握手したりしてサービス満点だ。危ないオヤジにしか見えなくもないけれど、微笑ましくて嬉しい。だいたいこのライブにきている人は皆、ブライアンが立っただけで大騒ぎだ。ブライアンというのは、そういう人なのである。
本編の締めは、”Be My Baby”！！ まさかスペクターのこの曲をラストにもってくるなんて！ 先日、ロニー・スペクターが”Don’t Worry Baby”のカバー曲を発売したけれど、そのことに対するアンサーも入っているのかも知れないね。いずれにせよ、ブライアンが憧れ続けたというこの曲を、彼自身が歌う姿は本当に感動的だった。
ところで、一部の最後もそうだったけれど、ブライアンは自分のボーカルパートが終わると、曲の演奏やコーラスが続いていても、さっさと舞台の袖に引っ込んでしまう。やっぱし、なんだか少しヘンなんだよなぁ。
アンコールでは、ブライアンはジャイアンツのオレンジはっぴを来て登場。サイドギターのメンバーが、２部から浴衣を着て登場していたので、なんだか温泉バンドみたいだ。
アンコールの１曲目で歌われたCaroline No は、このライブで唯一のブライアンのソロボーカルだった。その声は、とても表情豊かで、音符では表せないフィーリングに満ちている。僕はまたまた感動してしまうのだった。
そして、２回目のアンコール。このライブの最後を飾る曲は、Love and Mercy である。ピアノを主体としたシンプルな演奏をバックに、コーラスを全面に押し出したアレンジで歌われる。最初のフレーズが終わったところで、ブライアンが楽しそうに声を出して笑った。
とても温かい空気に包まれた会場が、大きな拍手をブライアンに送る。ブライアン・ウィルソンのライブは、本当に素晴らしかった。
by 静 炉厳
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曲目リスト The Little Girl I Once Knew Wouldn’t It Be Nice Caroline No アンコール2 |
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ミュージシャン Brian Wilson (vocals,keyboards) |
