あ・・・あの、前回はホント失礼しました。なんかヘンなテンションになっちゃって。オレ、どうかしてた。あの、ホントすみません。
でね、謝りついでにお話しますとね、”マリー・セレスト号”のミステリー。あれね、なんか事実関係が違うみたいよ。
いや、実はコックが残ってましたってのはホントなんだよ。でも、それ以外のマリー・セレスト号が発見されたときの状況ってのがなんか違うの。
実は食べかけの朝食も食べカスも湯気がたったコーヒーもなかったんだって。
で、救命ボートが残っていたことになってるけど、ボートも食べカスも実はなかったんだって。
おまけに船の名前も違ってて、実は”マリー”じゃなくて、”メアリー”なんだって。”メアリー・セレスト号”。なんだよ、全然違うじゃん！！
じゃあ、どこからそんなに違が出てきたかっていうとね、その犯人はコナン・ドイル。ほら、シャーロック・ホームズを書いた人です。犯人を見つけた！・・・と思ったら探偵でしたみたいなオチ。
まだ売れる前のコナン・ドイルは、1884年にメアリー・セレスト号の事件を下敷きにして『ジェ・ハバカク・ジェフスンの遺書』（『ドイル傑作集 2(海洋奇談編) 』に収録）っていう短編を書いたんだけど、この中で事実を脚色して面白くしたわけよ。
で、これが独り歩きしてなぜだか真実ってことになっちゃったのが、メアリー・セレスト号事件の正体なの。
でもさ、コナン・ドイルにはコティングリー妖精事件ってのもあるからね。この人は、少女たちが絵本から模写して切り抜いた妖精を使って作ったトリック写真を、本物の妖精と信じ込んで1922年に『妖精の出現』なんて本まで書いちゃった。
マリー・セレスト号の小説も、実は本気で人間消失の謎解きに挑戦したんじゃないかと思うね。で、書いてるうちになんかヘンなテンションになってきちゃって細かいことはいいやってなったわけよ。
今頃、反省してると思うね。自分、どうかしてたとかって。コナン・ドイルのオッチョコ野郎！
by 静 炉巌(2015/4/24)
