会議の時間の20分前になった。
役員も含まれている今回の会議は自分が主催者だ。
会議が始まる前にトイレの個室に入る。
ウォシュレット付の様式トイレ。
コトを終えて、ウォシュレットのボタンを押す。
ウォシュレットのバーが伸びてきて、適温のお湯で洗ってくれる。
やっぱりウォシュレットは最高だよな。
さて、スッキリと会議に行くか。
ウォシュレットのストップボタンを押して腰を上げる。
…と、一旦は止まったはずのお湯が、中腰になった尻に向かって勢いよく噴射された。
なんだ？ 慌てて便器に座りなおす。
いまのはいったいなんなんだ？
あらためてストップボタンを押して、股間からそっと下をのぞく。
お湯は止まっているが、水を噴射するウォシュレットバーが引っ込んでいない。
ゆっくりと尻をあげると、何を感知したのかまたもやお湯が噴射された。
このまま立ち上がったらビショ濡れの大惨事だ。
センサーどうなってんだよ！
下半身をびしょ濡れにして会議に現れたら、オシッコを漏らしたと思われるに決まっている。
これでは立ち上がれない！
チロチロと蛇が舌を出すように、うっすらと水を垂らしているウォシュレットのバーがオレを狙っている。
こいつはオレが動くと攻撃を仕掛けてくる！
まるで意志をもった猛毒のコブラだ。
ウォシュレットと尻のにらみ合い。
会議の時間まであとわずか。
このままでは間に合わない。
それどころかこのまま一生トイレから出られないかもしれない。
恐怖に襲われたオレは、指も折れよとばかりに死に物狂いでストップボタンを連打した。
だがウォシュレットのバーはまるで動く気配がない。
私、なにか便器さんがイヤがるようなコトしましたでしょうか？
いや、確かにコトはしましたよ。
でも、それは便器さんのお仕事ですからイヤがっちゃダメですよ。
オレ悪くないですから。
トイレットペーパーをガラガラと引いて折り畳み、股間からそっとウォシュレットのバーにかぶせてみる。
これならお湯の噴射を防げるんじゃないか？
そうっと尻を上げる…と、ペーパーを突き破ってお湯が攻撃を仕掛けてきた。
これ、どういう仕組みなんだよ！！
あぁ、紙よ！ いや、神よ！ どうかお助けください。
このまま攻撃を受け続けたら私の肛門は破れてしまうでしょう。
祈りを込めて、ストップボタンを連打する。力を入れ過ぎて指が痛い。
…と、ウォシュレットのバーがすっと引っ込んだ。
祈りが通じたのだ！
どこの神様かは存じませんが、ありがとうございます。
ズボンを上げて、トイレを出る。
大御所がそろっている会議室に走ってギリギリで滑り込む。
間に合った！
そうだ。この会議は2時間の予定だから、トイレ休憩の時間を挟むことにしよう。
もし、休憩後に戻ってこない人がいたなら…。うひひひ！
