横浜から根岸線に乗って、ドアの隣の席に座っていた。
発車のアナウンスが流れて、電車のドアが閉まろうかという瞬間、すぐ横でガターンというすごい音がした。
驚いて音の方角を見ると、銀色のジェラルミンケースが床を転がり、靴が宙を飛んでいる。そして持ち主らしい小太りのサラリーマンが、”気をつけ”の姿勢のまま横になって反対側のドアまでツツーと床を滑っていくと、ガツンと壁に頭をぶつけるのが見えた。
電車のドアが閉まる直前に飛び乗ろうとしたら、床に足を引っ掛けて勢いよく転んでしまったらしい。最初の音はジェラルミンケースが転がる音だった。
車内は空いていたけれど、居合わせた乗客は皆、異様な光景に戸惑っている。
気をつけの姿勢のまま倒れているサラリーマン。近くに立っていた人…というかその人の足元にサラリーマンが滑ってきたのだけれど…が彼に声をかけると、痛そうに顔をしかめていたが、とりあえず大事はなさそうだ。
それにしても、気をつけの姿勢のままで、人が床を滑っていくのなんてはじめてみた。
子供のころの駄玩具に”ロケット弾”というのがあって、これはロケットの形をしたプラスティック製の本体の先端に紙火薬を詰め、上に放り投げると落下して地面に接触した衝撃で爆発するというシンプルな玩具だったのだけど、なんだかそれを思い出したね。
まぁ、このサラリーマンがホントにロケット弾みたいだったら、壁に頭がぶつかった衝撃で頭部が爆発して、脳みそが散らばってますけど。
