このサイトって、どんな方がどんな時に見るんだろうなとたまに思ったりする。
でも、クダらない話が大半のサイトだから、お昼休みにお弁当でも食べながら、夜アクセスしてる方は夜食でも食べながら、食事時じゃなければ珈琲とか牛乳でも飲みながら、楽しんでもらえればなと思います。
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テレワークが進んだおかげで緩和されたとはいえ、通勤電車の混雑はキツイものだ。昔は、通勤地獄なんて言葉もあったしね。
さて、先週の金曜のこと。私は深夜12時頃に品川駅に向かう山手線に乗っていた。東海道線の終電時間も近く、車内はとても混んでいる。
車内の中ほどに立ちながら車内をみると、あるドアの周辺だけがポッカリと空いている。
だいたいこういうときは浮浪者の方か、泥酔した酔っ払いがいるに決まっているのけれど、案の上後者のようである。
好奇心をまるだしにして、人の頭の間からのぞいてみると、今回の酔っ払いは危険度98%の大物である。
なんかね、身体が相撲取りみたいにデカいんだよ。それはとりもなおさず内容量も多いということで、その巨漢が電車の揺れるがままにゆらゆらとドアの前で揺れている。
顔の赤さ加減、及び振幅度から察するに彼は噴出一歩手前である。例えるなら、三途の川の向こうで呼ぶお爺ちゃんの声に引かれて、ジャブジャブと川を渡っているところか、あるいは40階建てのビルから飛び降りて、3階ぐらいの窓で丁度室内の泥棒と目があったという感じか。意味はわかりませんけど。
とにかく周囲の乗客は敏感にも、その危険度を察知し、少しでもデンジャラスゾーンから遠ざかろうと、皆つま先だちで海老のように下がっていくのである。デブの周囲の空間が次第に広くなってゆく。
だが、危険を察知しながらも動けない人間がいた。そのデブの横に座っているサラリーマンである。せっかく座ったのに立つのは嫌だ。寝たふりしても意味がない。だが、このままでは危険地帯に取り残されてしまう。彼の葛藤が伝わってくる。
私は、かつてこれほど苦悶の表情を浮かべているサラリーマンを見たことがなかった。デブの振幅度の高まりと共に危険レベルはさらにあがっている。
もうすぐ品川駅に到着する。そのとき!
びしゃあー!べちゃー、びちゃー
という音と共に大量のゲロがデブから噴出した。しかも、それはしゃがんだ状態からのゲロではなく、立ちゲロだ。
高い位置から吐き出されたゲロは、いったん床に落ちたあと、運動保存の法則により激しく周囲に飛びちった。
まず、隣に座っていたサラリーマンは真っ先に死んだ。彼の靴とズボンの裾が、びちゃびちゃと液体とも固体とも判断できぬ物質でコーティングされていく様を私は目にしていた。わずかに麺類の断片を判断することができた。
いつも上役に怒られ、家に帰れば妻にイビラれる毎日を送っていた冴えない彼は、今日、その生涯を終えたのだ。
犠牲者は彼だけではない。ゲロは意志をもったかのように遠くまで飛び散り、そのサラリーマンの隣にいたOLも死んだ。結婚をあきらめて、犬を飼おうと決めた矢先のことだった。
サラリーマンの前に立っていた別のサラリーマンも昇天した。デブは惜しみなく、そして分け隔てなく周囲にゲロを与えたのだ。
そこには「オレにもっとゲロを寄こせ!」などと言う、利己的な人間は一人もいなかった。
立ちゲロを終えたデブは力尽きて、床にぶちまけた自分の”うげっぴ”の中に崩れるように座り込んだ。デブが勢いよく座り込んだ拍子に、またゲロが飛び散った。
だが、デブはまだ生きていた。ゲロの海の中から立ちあがろうともがいていた。しかし、デブである。
乾ききらぬ床ワックスがつるつると滑るように、デブは自分のゲロに足をとられて、またも転び、さらにゲロをびちゃびちゃと周囲に飛び散らかした。
最前列の人たちはそれを避けるために、無理な姿勢で身をくねらせている。それはまるで山海塾のような”ゲロの舞”であった。
品川駅に着いた私は一目散にホームに降りて、窓の外から朦朧とするデブをみていた。ドアが閉まる。デブよ、さらば! だが、なんということだ!
デブはドアが閉まる直前にダッシュをかけ、ゲロまみれの手でしっかりとドアを掴むと、無理矢理こじあけてホームに飛びだしてきたのである。
デブは、そのままホームに座り込んで、またゲロを吐いた。もしかしたら、永遠にゲロを吐きつづけるのではないかと背筋が寒くなってくる。
そういえば、昔、遠足のバスで吐いたやつのバケツを見にいって、気持ち悪くなって吐いたことがあった。あと小学生の頃、勉強机を買ってもらった時、回転椅子が嬉しくて、ぐるぐる回っていたら、気持ち悪くなって吐いたこともあった。
最近では、友人と”気持ち悪いメール合戦”をしたときもきつかったな。
これは、単にメールに気持ち悪い言葉を書いて送るだけなのだけど、途中で彼が「ゲロを食ったあとのウンコ」と送ってきて、オレが「ウンコ食ったあとのゲロ」と返した。すると次に送られてきたメールに書かれていたのは…
”そのゲロが入ったシャンプー”
そんなことを思いつつ、吐き続けるデブをみていたオレは、気持ち悪くなって貧血でダウンした。