久米嬢の仕事は、スマホ用の懸賞サイトを作ることだった。
懸賞サイトというのは、月額300円でサイトの会員になると毎月の懸賞に応募できるというもので、当選すると主催者から賞品が贈られるようになっている。
彼女の勤める会社では、部員がそれぞれに懸賞サイトを担当して、サイトの作成から商品の選択，会員向けメールの送信までを受け持っていた。
久米嬢は毎日、頭を悩ませながら景品となる商品を選んで会員の募集をしているのだけど、そのためには景品の選択が重要なポイントである。DVDプレイヤーやコスメセットなど、流行モノをうまく選ばなくてはならない。
そんな折、同じ課の先輩女性が退職することになり、久米嬢はその先輩が担当していたサイトを引き継ぐことになった。
先輩が作っていたサイトでは、商品内容を明示せずに、ただ『豪華賞品プレゼント』とだけ書かれていてお客の期待を煽るようになっている。
先輩女性は秘密主義だったので、豪華プレゼントの内容については彼女と当選者しか知らず、部内では彼女の選ぶ豪華商品がいったい何なのかよく話題になっていたものだ。
久米嬢はようやくその謎を知ることができて嬉しくなっていた。引き継ぎの日、先輩女性は一つのファイルを持ってきた。
「この文書にこれまでの豪華賞品について書かれてるから、参考にしてね！」
久米嬢はさっそくファイルをのぞいてみた。そこに書かれていた豪華賞品は…
・するめいかストラップ
・歯磨き粉
・うまい棒 １０本
・コンビニの２枚で百円雑巾
・中古の服など
想像とのあまりのギャップに久米嬢は先輩に尋ねたという。
「あの…中古の服ってサイズとかあるから、クレームとかこないんですか？」
「あぁ、私そういうの気にしないから。」
「あの百円の雑巾…って」
「いけないの？ だって新しいじゃん。ピンクのリボンつけて送ってるし」
毎月300円の会費を支払い、当選して送られてくる豪華賞品は100円程度のモノ。当選した人しかわからない悔しさ。
先輩のサイトは、当選した人が必ず退会する魔のサイトであった。
