子供の頃、サラリーマンの父のもとにはお中元だのお歳暮の時期には、「こんにちわー」とばかりに、やたらと神戸風月堂のゴーフルがやってきた。
こげ茶色の丸い缶にはいったゴーフル。2枚の生地の間にクリームを挟んだ焼き菓子である。この頃はバニラクリームしかなかったね。
そんなわけで、この時期、お菓子の戸棚の中には、ゴーフルの缶が積み重なっていた。
いや、それしかなかった。ゴーフルをおやつの王様だとしたら、王様だけで家来なし。で、その王様が何人も狭い城に居座っている。
ゴーフルは美味しいんだけどさ、それほど子供が好きなもんじゃないし、違うお菓子だって食べたいじゃん。お菓子棚を開けて、ゴーフル缶しかないのをみると絶望感が湧きあがったね。
で、オレはついにある時、「たまには、違うお菓子が食べたいんだよ！ 毎日、同じモノばっかりでもうイヤなんだよ！」と母親にゴネた。
そしたら何日かたって、母親がニコニコと「違うお菓子があるよ」とオレを呼んだ。
ポテトチップかな、チョコレートかな？ とにかくやっとゴーフルから解放されるとオレは喜んだ。
母親から渡されたのは、イチゴ味のゴーフルだった。
